【保存版②】非公開会社なら必須!株式の譲渡制限と定款設計の実務ポイントを徹底解説

会社設立の際、時間やコストの都合から、定款をテンプレートベースで作成するケースもあります。しかし、特に「株式に関する条項」は、単なる形式的な記載ではなく、将来の経営の自由度やトラブルの発生リスクを大きく左右する極めて重要な部分です。

譲渡制限の有無によっては望まない第三者が株主になる可能性もあり、相続時の対応を定めていないことで、思わぬ経営混乱を招くケースもあり得ます。

「とりあえず作る定款」から、「将来を見据えて設計する定款」へ。
本記事では、行政書士の実務視点から、見落とされがちな株式条項の重要ポイントについて解説していきます。

本記事では、株式譲渡制限会社(いわゆる非公開会社)のうち、小規模な会社を前提に、実務上よく採用される定款設計を中心に解説しています。公開会社や取締役会設置会社では取扱いが異なる場合がありますのでご留意ください。

本記事で解説する記載例

定款の記載例

第2章 株式

(発行可能株式総数)
第5条 当会社の発行可能株式総数は、1,000株とする。

(株式の譲渡制限)
第6条 当会社の株式を譲渡により取得するには、代表取締役の承認を受けなければならない。

(相続人等に対する売渡しの請求)
第7条 当会社は、相続その他の一般承継により当会社の株式を取得した者に対し、当該株式を当会社に売り渡すことを請求することができる。

なぜ“株式の章”が会社経営の自由度を左右するのか

定款の中でも「株式に関する条項」は、会社の支配関係と成長戦略の両方に直結する重要なパートです。ここをどう設計するかによって、将来の資金調達のしやすさや、経営の安定性が大きく変わります。

①発行可能株式総数と資本金設計の関係

発行可能株式総数は、定款の絶対的記載事項ではありませんが、会社法上、設立時には定めておく必要がある事項です。そのため、実務上は必ず検討が求められます。

この数値自体は、実益に大きく影響するものではありませんが、資本金の設定や将来的な増資のしやすさに大きく関わってきます。例えば、設立時に必要最低限の株式数で設定してしまうと、後に出資を受ける際に上限に抵触し、定款変更や登記が必要となるケースがあります。

会社法37条

(発行可能株式総数の定め等)
第三十七条 発起人は、株式会社が発行することができる株式の総数(以下「発行可能株式総数」という。)を定款で定めていない場合には、株式会社の成立の時までに、その全員の同意によって、定款を変更して発行可能株式総数の定めを設けなければならない。

②株式の譲渡制限

譲渡制限株式とは、株主がその株式を第三者に譲渡する際に、会社の承認を必要とする株式のことをいいます。これは定款で定めてはじめて効力が生じる制度です。特に、個人事業の法人成りや中小企業では極めて重要な制度です。

通常、株式は自由に売買できるのが原則です。しかし、この自由をそのままにしておくと、会社が把握していない第三者が突然株主になる可能性があります。そうなると、経営に関与してほしくない人物が議決権を持つことになり、会社の意思決定に大きな影響を及ぼすリスクが生じます。

そのため、上場を前提としない会社(いわゆる非公開会社)であれば、原則必須の設計です。むしろ、これを入れていない定款は、将来的なリスクを抱えた状態ともいえます。原則では株主総会の承認が必要となりますが、定款で別の定めをすることができます。

会社法2条、107条、136条、137条、139条

(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
十七 譲渡制限株式 株式会社がその発行する全部又は一部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要する旨の定めを設けている場合における当該株式をいう。

(株式の内容についての特別の定め)
第百七条 株式会社は、その発行する全部の株式の内容として次に掲げる事項を定めることができる。
一 譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要すること。

(株主からの承認の請求)
第百三十六条 譲渡制限株式の株主は、その有する譲渡制限株式を他人(当該譲渡制限株式を発行した株式会社を除く。)に譲り渡そうとするときは、当該株式会社に対し、当該他人が当該譲渡制限株式を取得することについて承認をするか否かの決定をすることを請求することができる。

(株式取得者からの承認の請求)
第百三十七条 譲渡制限株式を取得した株式取得者は、株式会社に対し、当該譲渡制限株式を取得したことについて承認をするか否かの決定をすることを請求することができる。

(譲渡等の承認の決定等)
第百三十九条 株式会社が第百三十六条又は第百三十七条第一項の承認をするか否かの決定をするには、株主総会(取締役会設置会社にあっては、取締役会)の決議によらなければならない。ただし、定款に別段の定めがある場合は、この限りでない。

③相続人に対する売渡請求

株主が亡くなった場合、その株式は相続人に承継されます。しかし、何の対策も講じていないと、株式が複数人に分散し、経営の意思決定に支障が出るリスクがあります。

こうしたリスクに備えるために有効なのが、相続人に対する売渡請求の規定です。

この条項を定款に定めておくことで、会社が株式を買い取ることが可能となり、株式の分散を防ぐことができます。特に同族会社では、事業承継対策の一環としても重要なポイントです。

会社法174条

(相続人等に対する売渡しの請求に関する定款の定め)
第百七十四条 株式会社は、相続その他の一般承継により当該株式会社の株式(譲渡制限株式に限る。)を取得した者に対し、当該株式を当該株式会社に売り渡すことを請求することができる旨を定款で定めることができる。

定款は「作るもの」ではなく「設計するもの」

株式に関する条項は、会社の将来を左右する重要な“設計図”です。
設立時にしっかりと設計しておくことで、将来的なトラブルや余計なコストを回避することができます。

「この内容で問題ないのか不安」「自社に合った設計にしたい」
そうした場合は、早い段階で専門家に相談することが、結果的に最も効率的な選択となります。

行政書士あおやま事務所は、
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