農業法人化後はどうなる?小規模企業共済のしくみと注意点

小規模企業共済は、農業者などの個人事業主や小規模企業の役員などが将来に備えるための制度です。しかし、個人で農業を営んでいた方が法人化すると、事業の形態や立場が変わるため、小規模企業共済についても加入資格や必要な手続きなどを確認する必要があります。

農業法人化では、会社設立そのものだけでなく、税金や社会保険など、事前に検討すべきポイントが数多くあります。そのため、小規模企業共済についても法人化のタイミングと合わせて確認し、将来の退職金や資金計画を含めた経営設計を考えることが大切です。

この記事では、妹背牛や深川などの北空知地域で農業法人化を検討している方に向けて、農業法人化と小規模企業共済の関係について分かりやすく解説します。

知っておきたい小規模企業共済の基本

小規模企業共済とはどのような制度か

小規模企業共済は、小規模企業の経営者や個人事業主などが、事業の廃止や退職に備えて掛金を積み立て、将来、一定の事由が発生した場合に共済金などを受け取る仕組みとなっています。

制度の大きな特徴は、「経営者の退職金制度」として利用できる点です。

会社員の場合、長年勤務した会社を退職する際に、勤務先の制度に基づいて退職金を受け取れることがあります。一方、会社の経営者や個人事業主の場合、自らが退職するための資金を勤務先が準備してくれるわけではありません。

そのため、現役で事業を続けている間から毎月掛金を納め、将来の退職や事業の終了に備えるという考え方が、小規模企業共済の基本となります。

小規模企業共済で受け取ることができる給付

小規模企業共済では、契約者に一定の事由が発生した場合、共済金などを受け取ることができます。

代表的なものとして、事業を廃止した場合や、会社の役員を退任した場合などがあります。このように、経営者としての立場を離れることになった際に、退職金に相当する資金を受け取ることが、小規模企業共済の基本的な役割です。

また、契約者自身の都合などによって解約する場合には、解約手当金を受け取ることができるケースもあります。

ただし、どの給付を受け取ることができるかは、契約終了の理由や加入期間などによって異なります。また、任意解約の場合には、加入期間によっては受け取る金額が納付した掛金の合計額を下回る可能性もあるため、制度を利用する際には注意が必要です。

また、共済金などは、一括で受け取る方法だけでなく、一定の条件を満たす場合には分割して受け取る方法なども用意されています。退職後の生活設計や税負担を考える際には、どのような方法で受け取るかについても検討する必要があります。

小規模企業共済を利用するメリット

小規模企業共済の大きなメリットの一つは、掛金が所得控除の対象となることです。

小規模企業共済の掛金は、所得税および住民税の計算において、原則として「小規模企業共済等掛金控除」の対象となります。支払った掛金について、その年に支払った掛金の全額を所得控除の対象とすることができる点が大きな特徴です。

この意味で、小規模企業共済は「将来の退職金を準備する制度」であると同時に、節税を考えるうえでもメリットのある制度といえます。

農業者が小規模企業共済に加入する場合の考え方

農業法人化と小規模企業共済の関係を考えるうえで、まず整理しておきたいのが、「現在、誰が、どのような立場で加入しているのか」という点です。

小規模企業共済の加入対象者は、大きく分けると、次の3つに分類されます。

  • 個人事業主
  • 個人事業主の共同経営者
  • 小規模企業を経営する会社等の役員

農業経営の場合も、この基本的な考え方は変わりません。

ただし、個人で農業を営んでいる段階と、農業法人化した後では、事業を営む主体そのものが変わります。そのため、法人化を検討する際には、現在の加入状況だけでなく、法人化後に自分や家族がどのような立場になるのかを整理しておくことが重要です。

個人経営の場合は「個人事業主」か「共同経営者」

農業法人を設立する前に、個人の名義で農業を営んでいる場合、実際に事業を営んでいる本人は、個人事業主として小規模企業共済に加入することになります。

個人事業主として加入し、毎月掛金を納めることで、その掛金を所得控除の対象とし、所得税や住民税の負担軽減につなげている方も多いでしょう。

また、農業経営では、事業主本人だけではなく、配偶者や後継者が経営に深く関わっているケースも少なくありません。こうした場合には、事業主本人とは別に、配偶者や後継者が個人事業主の共同経営者として小規模企業共済に加入していることも考えられます。

この場合は、事業主と一体となって事業の経営に携わっていることが前提となり、その関係を確認するために共同経営契約書などを作成したうえで加入しているケースが一般的です。

そのため、農業法人化を検討する際には、まず法人化前の個人経営の段階で、「誰がどの立場で小規模企業共済に加入しているのか」を整理しておく必要があります。

農業法人化後は「法人の役員」として加入資格を考える

一方、個人で営んでいた農業を法人化した場合、事業の経営主体は個人から法人へと変わります。

これに伴い、それまで個人事業主として小規模企業共済に加入していた方についても、法人化後は「個人事業主」という立場ではなく、設立した法人における「会社等の役員」として加入資格を考えることになります。この場合、一定の要件を満たすことで掛金納付月数を引き継ぐことができます。

役員とは、例えば株式会社であれば、取締役として登記されている方などが対象となります。合同会社の場合には、業務執行社員が該当します。

また、法人の従業員は、原則として小規模企業共済の加入対象ではありません

後継者が、農業法人に勤務し、農作業などの業務に従事していたとしても、従業員という立場であれば、小規模企業共済に加入することはできません。小規模企業共済は、法人に勤務する人のための一般的な退職金制度ではなく、小規模企業の経営者や役員のための制度だからです。

農業法人化後に注意したい小規模企業共済の2つのポイント

農業を個人事業から法人へ移行すると、小規模企業共済そのものがなくなるわけではありません。しかし、個人経営の段階と法人化後では、加入者の立場や掛金の税務上の取り扱いが変わるため、注意が必要です。

法人化で共同経営者の加入資格を失う可能性がある

個人で農業を営んでいる段階では、事業主本人が個人事業主として加入し、配偶者や後継者などが共同経営者として小規模企業共済に加入しているケースがあります。

しかし、農業法人化すると、事業の経営主体は個人から法人へ移ります。

その結果、それまで個人事業主の「共同経営者」として小規模企業共済に加入していた配偶者や後継者については、法人化後も同じ立場のまま加入を継続することはできません。

法人化後に小規模企業共済の加入資格を維持するためには、原則として、その人自身が法人における加入対象となる役員としての立場を持つ必要があります。

つまり、法人化後に配偶者や後継者が法人の役員に就任せず、従業員として勤務することになった場合には、共同経営者としての加入資格を失い、小規模企業共済への加入を継続できなくなる可能性があります。

小規模企業共済の掛金は法人の損金にならない

もう一つ注意しておきたいのが、小規模企業共済の掛金に対する税務上の取り扱いです。

小規模企業共済の掛金は、加入者本人の所得税や住民税を計算する際に、小規模企業共済等掛金控除として所得控除の対象となります。つまり、所得控除を受けることができるのは、実際に小規模企業共済に加入し、掛金を負担している本人です。

例えば、農業法人の役員として小規模企業共済に加入している場合でも、その掛金は法人の経費として損金算入するものではありません。法人が小規模企業共済の掛金を負担することで、会社の法人税を直接軽減できるという制度ではないため、「会社の節税対策」として考える際には注意が必要です。

そのため、実務上は、会社の利益や役員報酬等との兼ね合いを総合的に判断して、節税対策を講じていくことになります。

まとめ|小規模企業共済は「加入者の立場」を確認することが重要

小規模企業共済は、個人事業主や小規模企業の役員などが、将来の廃業や退職に備えるための「経営者の退職金制度」です。掛金の全額が所得控除の対象となるため、将来に向けた資金を準備しながら、所得税や住民税の負担軽減を図ることができる点も大きな特徴です。

一方、農業を個人経営から法人化すると、事業の経営主体が個人から法人へ変わります。これに伴い、小規模企業共済についても、それまでと同じ考え方で加入を継続できるとは限りません。

農業法人化は、法人設立の手続き以外にも、役員構成や税金、社会保険、将来の事業承継など、さまざまな要素が関係します。妹背牛や深川など北空知地域で農業法人化を検討している方は、小規模企業共済についても法人化前の段階から加入状況を確認し、法人化後の経営体制を見据えて準備を進めることが重要です。

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