【保存版④】株主総会の招集はどう書く?定款作成で押さえるべき会社法と実務ポイント

会社設立の際、多くの方が“とりあえず雛形で”定款を作成していませんか。しかし、その定款、実際の運用にきちんと耐えられる内容になっているでしょうか。

特に見落とされがちなのが株主総会に関する規定です。招集のタイミングや手続き、誰が招集するのかといったルールは、一見すると形式的な条文に見えますが、ひとたび運用を誤ると「その株主総会自体が無効になる」というリスクすらあります。つまり、定款の書き方ひとつで、会社運営の安定性が大きく左右されるのです。

本記事では、定款の中でも「株主総会」に関する基本条項に焦点を当て、会社法の条文と実務の考え方を踏まえながら、わかりやすく解説していきます。

本記事では、株式譲渡制限会社(いわゆる非公開会社)のうち、小規模な会社を前提に、実務上よく採用される定款設計を中心に解説しています。公開会社や取締役会設置会社では取扱いが異なる場合がありますのでご留意ください。

本記事で解説する記載例

定款の記載例

第3章 株主総会

(株主総会決議事項)
第16条 株主総会は、会社法に規定する事項及び株式会社の組織、運営、管理その他株式会社に関する一切の事項について決議をすることができる。

(招集時期)
第17条 定時株主総会は、毎事業年度の終了後3カ月以内に招集し、臨時株主総会は必要がある場合には、いつでも招集することができる。

(招集手続)
第18条 株主総会を招集するには、株主総会の日の3日前までに、議決権を行使することができる株主に対して招集通知を発するものとする。
2  前項の招集通知は書面によることを要しない。
3  第1項の規定にかかわらず、株主総会は、その総会において議決権を行使することができる株主の全員の同意があるときは、招集の手続きを経ることなく開催することができる。

(招集権者及び議長)
第19条 株主総会は、法令に別段の定めがある場合を除くほか、取締役の過半数をもって決定し、代表取締役社長が招集する。ただし、代表取締役社長に事故があるときは、他の取締役が招集する。
2  株主総会において、代表取締役社長が議長となる。ただし、代表取締役社長に事故があるときは、他の取締役がこれに代わり、取締役の全員に事故があるときは、出席株主の中から選任されたものがこれに代わる。

会社法どおりで十分?実は“そのまま”では危険です

株主総会に関するルールは、会社法で一定程度整備されています。
たとえば、株主総会の決議事項は会社法295条1項、招集時期は296条、招集手続きは299条と、それぞれ基本的な枠組みが定められています。

では、「法律に書いてあるとおりにしておけば問題ないのでは?」と思われるかもしれません。 しかし、実務の現場ではそれだけでは不十分です。
なぜなら、会社法はあくまで“原則ルール”を定めているに過ぎず、実際の会社運営においては、より柔軟かつ現実的な運用が求められるからです。

①決議事項

取締役会設置会社でなければ、会社法295条1項において、「株主総会は、株式会社に関する一切の事項について決議をすることができる」と明確に定められています。

つまり、株主総会は会社の最高意思決定機関として、“原則として何でも決めることができる”という位置づけにあります。定款上でも明確にしておくことで、意思決定の場面で迷いが生じにくくなり、会社運営の土台を安定させるうえで、非常に有効な一手といえるでしょう。

会社法295条

(株主総会の権限)
第二百九十五条 株主総会は、この法律に規定する事項及び株式会社の組織、運営、管理その他株式会社に関する一切の事項について決議をすることができる。
2 前項の規定にかかわらず、取締役会設置会社においては、株主総会は、この法律に規定する事項及び定款で定めた事項に限り、決議をすることができる。
3 この法律の規定により株主総会の決議を必要とする事項について、取締役、執行役、取締役会その他の株主総会以外の機関が決定することができることを内容とする定款の定めは、その効力を有しない。

②招集時期

定時株主総会について「毎事業年度の終了後一定の時期に招集しなければならない」と定められています。 会社法上では「一定の時期」に開催さえすれば良いということになります。

会社法296条

(株主総会の招集)
第二百九十六条 定時株主総会は、毎事業年度の終了後一定の時期に招集しなければならない。

しかし、実務上の目安となるのが、“3ヶ月以内”という考え方です。

この背景にあるのが、会社法124条の「基準日」です。
同条2項では、基準日株主が行使できる権利は、「その基準日から3ヶ月以内に行使するものに限る」とされています。

つまり、事業年度末日を基準日として株主を確定した場合、その株主が株主総会で議決権を行使できるのは、原則として基準日から3ヶ月以内に開催される総会に限られることになります。
したがって、定款においても「毎事業年度終了後3ヶ月以内に招集する」といった形で具体的に定めておくことで、実務と整合した、運用しやすいルールを設計することが可能になります。

会社法124条

(基準日)
第百二十四条 株式会社は、一定の日(以下この章において「基準日」という。)を定めて、基準日において株主名簿に記載され、又は記録されている株主(以下この条において「基準日株主」という。)をその権利を行使することができる者と定めることができる。
2 基準日を定める場合には、株式会社は、基準日株主が行使することができる権利(基準日から三箇月以内に行使するものに限る。)の内容を定めなければならない。

③招集手続

株主総会の招集通知は、原則として「2週間前まで」に書面で発する必要があると定められています。しかし、このルールはあくまで“原則”にすぎません。
特に中小企業の多くを占める非公開会社においては、定款でこの期間を短縮することが可能とされています。

実務上は、迅速な意思決定が求められる場面も多いため、あえて2週間という長い期間を維持するよりも、3日〜5日程度に設定しておくことで、機動的な会社運営が可能になります。

さらに、株主全員の同意がある場合には、招集手続き自体を省略することも認められています。

会社法297条、300条

(株主総会の招集の通知)
第二百九十九条 株主総会を招集するには、取締役は、株主総会の日の二週間(前条第一項第三号又は第四号に掲げる事項を定めたときを除き、公開会社でない株式会社にあっては、一週間(当該株式会社が取締役会設置会社以外の株式会社である場合において、これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間))前までに、株主に対してその通知を発しなければならない。

(招集手続の省略)
第三百条 前条の規定にかかわらず、株主総会は、株主の全員の同意があるときは、招集の手続を経ることなく開催することができる。ただし、第二百九十八条第一項第三号又は第四号に掲げる事項を定めた場合は、この限りでない。

④招集権者および議長

株主総会では、代表取締役を招集権者とし、あわせて議長とする形で定款に明記するのが一般的です。
加えて、代表取締役に事故あるときについても、あらかじめ決めておくのが良いでしょう。

会社法296条、315条

(株主総会の招集)
第二百九十六条 (略)
2 (略)
3 株主総会は、次条第四項の規定により招集する場合を除き、取締役が招集する。

(議長の権限)
第三百十五条 株主総会の議長は、当該株主総会の秩序を維持し、議事を整理する。
2 株主総会の議長は、その命令に従わない者その他当該株主総会の秩序を乱す者を退場させることができる。

また、見落とされがちなのが招集の決定プロセスです。
たとえば取締役会設置会社であれば、株主総会の招集は取締役会の決議によって決定する必要があります。
一方で、取締役会を設置していない会社であれば、取締役の過半数による決定が必要になります。

会社法298条、348条

(株主総会の招集の決定)
第二百九十八条 取締役(前条第四項の規定により株主が株主総会を招集する場合にあっては、当該株主。次項本文及び次条から第三百二条までにおいて同じ。)は、株主総会を招集する場合には、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 株主総会の日時及び場所
二 株主総会の目的である事項があるときは、当該事項
三 株主総会に出席しない株主が書面によって議決権を行使することができることとするときは、その旨
四 株主総会に出席しない株主が電磁的方法によって議決権を行使することができることとするときは、その旨
五 前各号に掲げるもののほか、法務省令で定める事項
2 (略)
3 (略)
4 取締役会設置会社においては、前条第四項の規定により株主が株主総会を招集するときを除き、第一項各号に掲げる事項の決定は、取締役会の決議によらなければならない。

(業務の執行)
第三百四十八条 取締役は、定款に別段の定めがある場合を除き、株式会社(取締役会設置会社を除く。以下この条において同じ。)の業務を執行する。
2 取締役が二人以上ある場合には、株式会社の業務は、定款に別段の定めがある場合を除き、取締役の過半数をもって決定する。

このプロセスを経ずに招集した場合、手続違反として争われるリスクがあるため注意が必要です。

会社法831条

(株主総会等の決議の取消しの訴え)
第八百三十一条 次の各号に掲げる場合には、株主等(当該各号の株主総会等が創立総会又は種類創立総会である場合にあっては、株主等、設立時株主、設立時取締役又は設立時監査役)は、株主総会等の決議の日から三箇月以内に、訴えをもって当該決議の取消しを請求することができる。当該決議の取消しにより株主(当該決議が創立総会の決議である場合にあっては、設立時株主)又は取締役(監査等委員会設置会社にあっては、監査等委員である取締役又はそれ以外の取締役。以下この項において同じ。)、監査役若しくは清算人(当該決議が株主総会又は種類株主総会の決議である場合にあっては第三百四十六条第一項(第四百七十九条第四項において準用する場合を含む。)の規定により取締役、監査役又は清算人としての権利義務を有する者を含み、当該決議が創立総会又は種類創立総会の決議である場合にあっては設立時取締役(設立しようとする株式会社が監査等委員会設置会社である場合にあっては、設立時監査等委員である設立時取締役又はそれ以外の設立時取締役)又は設立時監査役を含む。)となる者も、同様とする。
一 株主総会等の招集の手続又は決議の方法が法令若しくは定款に違反し、又は著しく不公正なとき。

定款は“少しずつ整えるもの”

ここまで、株主総会に関する定款の中でも、決議事項・招集時期・招集手続き・招集権者および議長という4つのポイントを見てきました。
どれも難しく感じるかもしれませんが、実は一つひとつは「会社法でこう決まっている」「実務ではこう考えるとスムーズ」といった、シンプルな積み重ねです。

大切なのは、こうしたルールを“なんとなく”ではなく、きちんと理解したうえで定款に落とし込んでおくことです。
そして、少しでも不安や疑問があれば、行政書士などの専門家に相談することで、より安心して会社運営を進めることができます。

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