【保存版⑤】株主総会の決議はこう変わる!普通決議・特別決議と定款設計の重要論点

株主総会は、会社の重要事項を決定する“最高意思決定機関”です。ゆえに、株主総会の決議方法は、単に法律の条文をなぞるだけでは不十分です。定款の設計次第で、決議の成立要件や手続の進め方は大きく変わります。

特に中小企業では、株主の数や関係性、出席状況によっては、原則どおりの要件では機動的な意思決定が難しくなることもあります。だからこそ重要なのが、“自社に合った定款設計”です。

本記事では、株主総会に関する定款条項のうち実務上重要な4つのポイントについて、会社法の考え方を踏まえてわかりやすく解説していきます。

本記事では、株式譲渡制限会社(いわゆる非公開会社)のうち、小規模な会社を前提に、実務上よく採用される定款設計を中心に解説しています。公開会社や取締役会設置会社では取扱いが異なる場合がありますのでご留意ください。

本記事で解説する記載例

定款の記載例

(決議の方法)
第20条 株主総会の決議は、法令又は定款に別段の定めがある場合を除き、出席した当該株主の議決権の過半数をもって行う。
2  会社法第309条第2項に定める決議は、定款に別段の定めがある場合を除き、議決権を行使することができる株主の議決権の3分の1以上を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の3分の2以上に当たる多数をもって行う。

(株主総会の決議等の省略)
第21条 取締役又は株主が株主総会の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき株主(当該事項について議決権を行使することができるものに限る。)の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、当該提案を可決する旨の株主総会の決議があったものとみなす。
2  取締役が株主の全員に対して株主総会に報告すべき事項を通知した場合において、当該事項を株主総会に報告することを要しないことにつき株主の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、当該事項の株主総会への報告があったものとみなす。

(議決権の代理行使)
第22条 株主が代理人をもって議決権を行使しようとするときは、その代理人は1名とし、当会社の議決権を有する株主であることを要する。
2  前項の場合には、株主又は代理人は、代理権を証する書面を株主総会ごとに提出しなければならない。

(株主総会議事録)
第23条 株主総会の議事の経過の要領及びその結果は、法務省令で定めるところにより、議事録に記載又は記録し、議長及び議事録の作成に係る職務を行った取締役がこれに署名若しくは記名押印又は電子署名を行う。

株主総会条項は“形だけ”では足りない

株主総会に関する定款条項は、多くの会社で「ひな形どおり」に整備されていることが少なくありません。確かに、決議方法や議事録の作成、代理行使といった事項は会社法に規定があるため、一見するとそのまま記載しておけば足りるようにも思えます。

しかし実務では、株主構成や会社の規模、意思決定のスピード感によって、「会社法どおり」では運用しづらい場面が出てきます。たとえば、株主が分散している場合の決議の成立や、迅速に意思決定を行いたい場面での手続の簡略化など、定款の書き方ひとつで対応のしやすさが大きく変わります。

①普通決議・特別決議と“定足数設計”の実務

まず、株主総会の「決議の方法」についてです。この条項では、会社法上の原則を踏まえつつ、定款でどこまで柔軟に設計するかが重要になります。
会社法上、株主総会の決議には大きく「普通決議」と「特別決議」があります。

  • 普通決議(会社法309条1項):議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数をもって行う
  • 特別決議(同条2項):議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の3分の2以上に当たる多数をもって行う

ここで実務上のポイントとなるのが、定足数(出席要件)の扱いです。

普通決議については、この定足数を定款で撤廃することが可能とされています。つまり、出席株主の議決権の過半数で足りる設計にすることで、株主の出席状況に左右されず、機動的に意思決定を行うことができます。

また、特別決議についても、定足数は定款により「3分の1以上」まで緩和することが認められています。特に中小企業では、この点を緩和しておくことで、重要事項の決議が滞るリスクを回避できます。

会社法309条

(株主総会の決議)
第三百九条 株主総会の決議は、定款に別段の定めがある場合を除き、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数をもって行う。
2 前項の規定にかかわらず、次に掲げる株主総会の決議は、当該株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(三分の一以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の三分の二(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければならない。この場合においては、当該決議の要件に加えて、一定の数以上の株主の賛成を要する旨その他の要件を定款で定めることを妨げない。
(以下略)

②決議等の省略の活用

決議の省略は、株主全員が書面または電磁的方法により同意した場合には、株主総会を実際に開催しなくても、決議があったものとみなされる制度です。いわゆる「みなし決議」と呼ばれるもので、株主が少数で関係性も近い中小企業では特に活用される場面が多くあります。

会社法319条

(株主総会の決議の省略)
第三百十九条 取締役又は株主が株主総会の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき株主(当該事項について議決権を行使することができるものに限る。)の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、当該提案を可決する旨の株主総会の決議があったものとみなす。

また、報告の省略についても、株主全員が書面等により同意すれば、本来株主総会で行うべき報告事項を省略することが可能です。これにより、形式的な株主総会の開催を省き、迅速に手続を進めることができます。

会社法320条

(株主総会への報告の省略)
第三百二十条 取締役が株主の全員に対して株主総会に報告すべき事項を通知した場合において、当該事項を株主総会に報告することを要しないことにつき株主の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、当該事項の株主総会への報告があったものとみなす。

③議決権の代理行使の設計ポイント

議決権の代理行使は、株主が自ら出席できない場合に、代理人を通じて議決権を行使できる制度です。その代理人の範囲については、定款で一定の制限を設けることが可能です。実務では、「代理人は当会社の議決権を有する株主に限る」といった形で、株主に限定する規定が置かれることが一般的です。

このような制限は、一見すると権利行使を制約するようにも見えますが、判例上も「合理的な理由がある場合の制限」として有効とされています。例えば、会社と無関係な第三者が株主総会に関与することを防ぎ、円滑かつ適正な議事運営を確保するという趣旨があります。

会社法310条

(議決権の代理行使)
第三百十条 株主は、代理人によってその議決権を行使することができる。この場合においては、当該株主又は代理人は、代理権を証明する書面を株式会社に提出しなければならない。
2 前項の代理権の授与は、株主総会ごとにしなければならない。
3 第一項の株主又は代理人は、代理権を証明する書面の提出に代えて、政令で定めるところにより、株式会社の承諾を得て、当該書面に記載すべき事項を電磁的方法により提供することができる。この場合において、当該株主又は代理人は、当該書面を提出したものとみなす。

④株主総会議事録の重要性

株主総会の議事録は、会社法において作成が義務付けられており、株主総会の内容を証明する極めて重要な書面です。

会社法上、株主総会を開催した場合には、その経過および結果を記載した議事録を作成し、本店に備え置く必要があります。実務では形式的に作成されがちな書類ですが、後日トラブルが生じた際には、「どのような手続で、どのような決議がなされたのか」を裏付ける重要な証拠となります。

そのため、定款においても議事録の作成について明記しておくことで、社内における手続意識を高め、適切な記録を残す体制を整えることにつながります。

会社法318条

(議事録)
第三百十八条 株主総会の議事については、法務省令で定めるところにより、議事録を作成しなければならない。

その定款、“使える形”になっていますか?

いずれの条項も会社法に規定があるため、形式的には「そのまま書けばよい」と思われがちです。しかし実際には、定款でどのように定めるかによって、意思決定のしやすさや手続の円滑さ、さらには将来的なトラブルリスクまで大きく変わってきます。

特に中小企業においては、株主構成や実際の運営状況に合わせて、無理なく運用できる内容に落とし込むことが重要です。「決議が成立しない」「手続が煩雑で機動的に動けない」といった事態を防ぐためにも、定款は“実際に使える形”で設計しておく必要があります。

現在の定款が自社の実態に合っているか、一度見直してみることをおすすめします。定款の作成や見直しについてお悩みの方は、行政書士などの専門家に相談することで、自社に最適な設計を行うことができます。

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