住宅ローンの固定金利vs変動金利|心理学で考える最適解②
本記事は、意思決定理論の考え方を住宅ローンの金利タイプ選びに当てはめ、抽象的な理論を具体的な場面にどのように活用できるかを考察することを目的としています。そのため、特定の金利タイプ(固定金利・変動金利)や金融商品を推奨するものではありません。また、本記事で紹介する考え方は、個々の状況における最適な選択や、将来の金利動向・返済結果を保証するものではありません。実際に住宅ローンを選択する際は、ご自身の収入や家計状況、ライフプラン、リスク許容度などを踏まえ、総合的に判断してください。
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3.プロスペクト理論から考える固定金利と変動金利の違い
固定金利と変動金利は、一般的には「どちらを選べば得なのか」という視点で比較されます。
しかし、プロスペクト理論の視点から考えると、単純にどちらが多くの利益を得られるのかだけではなく、「どのような損失が発生する可能性があるのか」「その損失を避けられる可能性があるのか」という点も重要になります。
変動金利は金利低下による利益と金利上昇による損失の両方がある
変動金利では、市場金利の変化に応じて適用される金利や返済負担が変わる可能性があります。
金利が下がれば、固定金利よりも低い金利で返済できる可能性があり、金利低下による利益を得られます。一方で、金利が上昇すれば、将来的に返済負担が増える可能性があります。
つまり、変動金利には「金利が下がることで得をする可能性」と「金利が上がることで損をする可能性」の両方があります。これは、先ほど見てきたプロスペクト理論の利益と損失の両方を含んだ選択肢として考えることができます。
変動金利を選ぶということは、将来の金利が有利な方向に動けば利益を得られる可能性がある一方で、不利な方向に動けば損失が発生する可能性があり、その2つの可能性を受け入れるということです。
固定金利は金利上昇による損失を抑える選択
一方、固定金利では、契約時に決められた金利が基本的に維持されるため、市場金利が変化しても、その影響を直接受けにくいという特徴があります。
そのため、市場金利が下がった場合には、変動金利のように金利低下による利益を得ることはできません。しかし、市場金利が上昇した場合でも、契約した金利が維持されるため、金利上昇による返済負担の増加を避けられます。
この意味で固定金利は、「大きな利益を得る可能性を取りに行く」というより、「将来の大きな損失を避ける可能性を確保する」という選択として捉えることができます。
ここで重要なのは、「得をしないこと」と「損をすること」は同じではないということです。
固定金利を選んだ場合、金利が下がれば「変動金利ならもっと得をしていた」と感じる可能性はあります。しかし、それは必ずしも「固定金利を選んだことで損失が発生した」という意味ではありません。
この「利益を得られなかったこと」と「損失を被ったこと」の違いが、固定金利と変動金利を心理学的に考えるうえで重要なポイントになります。
4.人は何を基準に「得した」「損した」と感じるのか?
人は、何かを選択した後も、その結果をさまざまなものと比較します。
住宅ローンであれば、
- 変動金利にしておけばよかった
- もっと早い時期に借りておけばよかった
- 別の金融機関を選んでおけばよかった
といったことを考えることがあります。
選ばなかった選択肢と比較してしまう心理
自分が実際に選んだものだけではなく、「選ばなかった別の選択肢」と比べてしまうのは、決して珍しいことではありません。「隣の芝生は青く見える」という言葉があるように、自分が選ばなかったもののほうが良く見えてしまうことがあります。
こうした比較をしてしまうこと自体は、人間の自然な心理です。ただし、これからの住宅ローンの返済計画を考えるときまで、過去の選択や他人の条件と比較し続けるのは健全ではありません。
これから金利がどうなった場合に家計がどうなるのか、そしてその変化に自分がどう対応するのかを考えるのであれば、過去の「もっと良かったかもしれない選択」と比べ続けるよりも、現在の状態を出発点にしたほうが考えやすくなります。
つまり、「今、自分はいくらの住宅ローンを、どの金利で、どのくらいの返済負担で返しているのか」ということを基準にするべきです。
そうすることで、「本当はもっと得をできたのではないか」という過去との比較ではなく、「ここからどうなるのか」という、これからの問題に目を向けることができます。
これからの返済計画は「現在の状態」を出発点に考える
現在の状態を出発点にして考えると、固定金利と変動金利の違いがはっきりしてきます。
変動金利は、今より金利が下がれば、現在よりも返済負担が軽くなる可能性があります。これは「今より得をする」という方向です。一方で、今より金利が上がれば、現在よりも返済負担が重くなる可能性があります。こちらは「今より損をする」という方向です。
つまり、変動金利には「得をする可能性」と「損をする可能性」の両方があります。
これに対して、固定金利は少し違います。固定金利では、契約上固定されている期間については、現在決まっている金利を基本として返済していきます。そのため、市場金利が今より上昇したとしても、その上昇によって返済負担が直接増えるわけではありません。反対に、市場金利が今より下がったとしても、変動金利のように金利低下による恩恵を受けるわけではありません。
つまり、現在の状態を基準にして金利変動による影響だけを考えると、固定金利は「得をする可能性」も「損をする可能性」も基本的には取らない選択だと考えることができます。経済的な文脈では正確ではありませんが、齟齬を恐れず換言するなら、「損をしない代わりに、得もしない」ということです。
ここに、プロスペクト理論の考え方を当てはめる意味があります。人は、利益を得る可能性だけでなく、損失を被る可能性も強く意識します。
変動金利には、金利が下がったときに「得をする」可能性があります。しかし、その裏側には、金利が上がったときに「損をする」可能性もあります。固定金利には、金利が下がったときに「得をしない」という面があります。しかし、その代わりに、金利上昇による返済負担の増加という「損をしない」ということです。
「得をする可能性を取るのか、それとも損をする可能性を避けるのか」。
この違いとして考えると、固定金利と変動金利の選択が、人間の心理とつながって見えてきます。
| 変動金利 | 固定金利 | |
|---|---|---|
| 金利が上がる | 損をする | 損をしない |
| 金利が下がる | 得をする | 得をしない |
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