行政手続き約7万5,000件をAIで分析?行政DXが変える「手続きの未来」③

デジタル庁が、興味深い取り組みをリリースしました。

今回公表されたのは、国の行政手続等に関する約75,000件の調査データを、AIとの対話を通じて自然な言葉で分析できるようにする技術検証です。

具体的に何ができるようになるのか。私たちにとって、どこが便利になっていくのか。そして、行政手続きの未来はどうなるのかを、行政書士の視点から考えていきます。

⾏政⼿続等調査データ(約75,000件)をMCPで⾃然⾔語分析可能に|デジタル庁

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行政手続き約7万5,000件をAIで分析?行政DXが変える「手続きの未来」②

デジタル庁が、興味深い取り組みをリリースしました。 今回公表されたのは、国の行政手続等に関する約75,000件の調査データを、AIとの対話を通じて自然な言葉で分析できる…

【第3回】行政DXは「デジタルデバイド」とどう向き合うのか

1. デジタル化で、行政手続きの負担は本当に減るのか

行政手続きのDXは、単に紙の手続きをオンライン化するだけでは不十分です。紙で行っていた手続きを、そのままパソコンやスマートフォンでできるようにする。それ自体は、もちろん便利になる部分があります。

しかし、これまでの煩雑な手続きの流れや仕組みを変えないまま、単にデジタルに置き換えただけでは、利用者が負担しなければならないことそのものは変わりません。

紙の書類を準備する負担が、オンラインで入力する負担に変わる。窓口へ行って確認する負担が、ホームページを探して必要な情報を確認する負担に変わる。書類の書き方が分からないという負担が、どこに何を入力すればいいのか分からないという負担に変わる。

つまり、負担がなくなるのではなく、負担の種類が変わっただけ、ということになります。そして、ここにデジタルデバイドの問題も関係してくると思います。

同じデジタル化された手続きでも、パソコンやスマートフォンの操作に慣れている人にとっては、それほど大きな負担ではないかもしれません。一方で、普段からデジタル機器を使う機会が少ない人や、オンラインでの手続きに慣れていない人にとっては、それまでとは違う新しい負担が生まれます。

デジタル化そのものが悪いということではありません。むしろ、デジタル化によって便利になる人は、これからますます増えていくはずです。

ただし、手続きそのものを見直さず、紙で行っていた負担を別の形に変えただけであれば、その新しい負担を問題なく処理できる人と、できない人の差が生まれる可能性があります。そして、その差が大きくなれば、デジタル化によって行政サービスが便利になる一方で、デジタルに慣れている人と、そうでない人との間に格差が生まれることにもつながります。

つまり、DX化の再設計には、手続き負担を減らすことだけでは足りず、格差なく負担を減らすことが求められます。そして、デジタルデバイドには、「アクセス格差」と「手続き格差」の2つの格差が内包しうるということです。

2. 行政手続きのデジタルデバイドには2つの「格差」がある

行政手続きのデジタル化が進む中で、デジタルデバイドを考えるときには、少なくとも2つの格差を考える必要があるのではないでしょうか。

一つは、必要な行政サービスにたどり着けるかどうかという「アクセス格差」です。そしてもう一つが、必要な手続きが分かった後、実際にその手続きを最後まで進められるかどうかという「手続き格差」です。

「必要な情報」にたどり着けるか―アクセス格差

今回のデジタル庁の取り組みの方向性を考えると、この「アクセス格差」を小さくする可能性を持っていると思います。

これまでは、自分に必要な行政手続きを知るために、自分自身で検索し、関係する制度を調べ、必要な情報を探していく必要がありました。しかし、AIとの対話を通じて、自分の状況を自然な言葉で伝えることで、必要な手続きにアクセスしやすくなります。

利用者が、

  • 何というキーワードで検索すればいいのか
  • どのホームページを探せばいいのか
  • どのページに必要な情報があるのか

と考える工程そのものを減らせる可能性があるからです。

そして、操作の面でも比較的シンプルです。これまで「検索する」ために必要だった知識や操作が、「質問する」という、より直感的な方法に変わっていきます。

もちろん、AIを利用すること自体に慣れが必要になる人もいるでしょう。それでも、必要な情報を探すために、複数の工程を自分で行う方法と比べれば、利用者に求められる作業は大きく減ります。

「必要な手続き」を完了できるか―手続き格差

しかし、その先で実際に手続きを進めることができるかどうかは、また別の問題です。

例えば、

  • 何を入力すればいいのか分からない
  • 自分の場合、どの選択肢を選べばいいのか分からない
  • どの書類を準備すればいいのか分からない
  • 複数の手続きのうち、どの順番で進めればいいのか分からない
  • 途中でエラーや不明点が出たときに、どう対応すればいいのか分からない

といった問題です。

ここまでくると、単純に「AIを使えるかどうか」という問題だけではありません。必要な手続きを見つけることと、その手続きを理解し、実際に進め、最後まで完了させることには、大きな違いがあります。

だからこそ、今後は「必要な情報にアクセスできるか」というアクセス格差だけではなく、必要な手続きを最後まで完了できるかという手続き格差についても考えていく必要があると思います。

そして、この手続き格差を小さくするためには、AIを導入するだけでは十分ではありません。手続きそのものが分かりやすく設計されているのか。複雑な制度や専門用語を、利用者が理解できる形にできているのか。途中で迷ったり、つまずいたりした場合に、適切な案内を受けられるのか。

こうした、実際に手続きを進める段階での「分かりやすさ」や「進めやすさ」が重要になってきます。表面的には、UI(ユーザーインターフェース)に代表される各種の設計です。

3. AIの高度化と行政手続きの再設計

今回のデジタル庁の取り組みでは、国の行政手続等に関する調査データを活用し、AIとの対話を通じて必要な情報にアクセスしやすくすることが方向性の一つです。

この仕組みは、先ほど触れた「アクセス格差」を小さくするという点では、非常に期待できる取り組みだと思います。

そもそも、必要な行政手続きにたどり着くためには、「どのような手続きがあるのか」という情報が必要です。その情報を一定の形で整理し、データとして整備する。そして、そのデータをAIが分析し、利用者の質問に応じて必要な情報を示す。

しかし、ここからさらに、「必要な手続きを見つける」だけではなく、「実際の手続きを最後まで進める」というところまでAIが支援することを考えると、必要になるものも変わってきます。

手続きを進めるには、より個別具体的なデータが必要になる

実際の行政手続きを進める段階では、より個別具体的な情報が必要になります。

例えば、

  • この人の状況では、どの選択肢を選ぶ必要があるのか
  • このケースでは、どの書類が必要になるのか
  • 複数の条件が重なった場合、どのように処理するのか
  • 個別の事情によって、通常とは異なる対応が必要になるのか

といったことです。

つまり、「どの手続きが必要か」を案内する段階よりも、その先の「どのように手続きを進めるか」という段階のほうが、扱う情報は煩雑になります。そうなれば、AIが参照するためのデータも、より細かく整備する必要が出てくるでしょう。

単純にデータの量が増えるだけではありません。個別の事情によって、どの情報を参照するのか。複数の条件がある場合、どのように整理するのか。どの条件を優先し、どのような結果につなげるのか。こうしたデータの集計や分析、処理方法そのものについても、より高度な定義や設計が必要になってきます。

そして、そうした複雑な情報や条件を適切に処理するためには、それに対応できるAIの高度化も必要になってくるはずです。もちろん、こうした技術的な進歩には、今後も期待できる部分があると思います。

AIの高度化だけでなく、行政手続きそのものの見直しも必要

だからこそ、それと同時に、行政手続きそのものを見直していくというアプローチも必要ではないでしょうか。

これまでの仕組みを前提に、AIがその複雑さに対応するようにするだけではなく、制度や手続きそのものを見直し、複雑さを減らしていく。そうすることで、利用者にとって分かりやすくなるだけではありません。AIにとっても、必要な情報を理解し、処理しやすい形にしていくことができます。

これからの行政DXでは、この2つのアプローチを同時に考えていく必要があると思います。

一つは、より個別具体的な行政手続きにも対応できるように、データを整備し、そのデータを適切に分析・処理できるように定義した上で、AIの高度化に期待することです。

そしてもう一つは、利用者である人間だけではなく、AIにとっても分かりやすいように、行政手続きそのものを再設計していくことです。

この両方を進めていくことで、今回のようなAI活用が、単に「必要な情報を探しやすくする」ことにとどまらず、行政手続き全体をより利用しやすくしていくことにつながるのではないかと思います。

やってみた!行政手続き約7万5,000件をAIで分析?

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