【保存版③】株式関連の定款規定を完全整理!会社法に基づく実務対応ガイド
定款というと、「会社設立のときに作る形式的な書類」というイメージを持たれている方も多いかもしれません。実際、今回取り上げる株式に関する規定も、日々の売上や利益に直結するような要素ではなく、見過ごされがちな領域です。
ただ、こうした一見地味な条項こそ、実務の手間や意思決定のスピードにじわじわと影響を与える“土台”になる部分です。逆に言えば、適切な条項を入れていないだけで、不要な手間や時間がかかってしまう可能性もあるのです。
本記事では、会社法に基づきながら、株式に関する定款規定の重要な論点を条項ごとに整理していきます。
本記事では、株式譲渡制限会社(いわゆる非公開会社)のうち、小規模な会社を前提に、実務上よく採用される定款設計を中心に解説しています。公開会社や取締役会設置会社では取扱いが異なる場合がありますのでご留意ください。
本記事で解説する記載例
定款の記載例
(特定の株主からの自己株式の取得)
第8条 当会社は、株主総会の決議によって特定の株主からその有する株式の全部又は一部を取得することができる。
2 前項の場合、当会社は会社法第160条第2項及び同条第3項の規定を適用しないものとする。(株主割当)
第9条 株式無償割当てを受ける権利を株主に与える場合における割り当てる株式の数又はその数の算定方法、効力発生日及び種類株式の場合に割当てを受ける株主の有する株式の種類は、取締役の過半数の決定により定める。
2 募集株式及び募集新株予約権の割当てを受ける権利を株主に与える場合における募集事項、株主に対し募集株式及び募集新株予約権の割当てを受ける権利を与えること及び引受申込期日は、取締役の過半数の決定により定める。(株券の不発行)
第10条 当会社の株式については、株券を発行しない。(株主名簿記載事項の記載又は記録の請求)
第11条 当会社の株式取得者が株主名簿記載事項を株主名簿に記載又は記録することを請求するには、株式取得者とその取得した株式の株主として株主名簿に記載され、若しくは記録された者又はその相続人その他の一般承継人が当会社所定の書式による請求書に署名又は記名押印し、共同して請求しなければならない。
2 前項の規定にかかわらず、利害関係人の利益を害するおそれがないものとして法務省令に定める場合には、株式取得者が単独で株主名簿記載事項を株主名簿に記載又は記録することを請求することができる。(質権の登録及び信託財産の表示)
第12条 当会社の株式につき質権の登録又は信託財産の表示を請求するには、当会社所定の書式による請求書に当事者が署名又は記名押印して提出しなければならない。その登録又は表示の抹消についても同様とする。(手数料)
第13条 前二条に定める請求をする場合には、当会社所定の手数料を支払わなければならない。(株主の住所等の届出)
第14条 当会社の株主及び登録株式質権者又はその法定代理人若しくは代表者は当会社所定の書式により、その氏名又は名称、住所及び印鑑を当会社に届け出なければならない。届出事項に変更を生じたときも、その事項につき、同様とする。(基準日)
第15条 当会社は、毎事業年度末日の最終の株主名簿に記載又は記録された議決権を行使することができる株主をもってその事業年度に関する定時株主総会において権利を行使することができる株主とする。
2 前項のほか必要があるときは、取締役の過半数の決定によりあらかじめ公告して臨時に基準日を定めることができる。
見逃し厳禁!条項ごとの重要ポイント
株式に関する定款規定は、一つひとつは細かいものの、実務における“手間”や“スピード”に確実に影響します。ここでは、押さえておきたい主要な論点を条項ごとに整理します。
自己株式取得/株主割当の特例規定
自己株式の取得とは、会社がすでに発行している自社の株式を、既存の株主から買い取る手続きのことをいいます。会社が株主から株式を買い取る場合、手続きの公正性を確保するために、一定のルールが設けられています。他の株主にも機会を与えるための通知や、取得条件の明示といった手続きを踏む必要があります。
ただし、特定の株主からの取得については、定款で別段の定めを置くことにより、これらの通知手続きを省略することが可能です。実務上頻繁に発生するわけではありませんが、いざというときの手続き負担を軽減できるため、あらかじめ規定しておく意義があります。
会社法156~158条、160条
(株式の取得に関する事項の決定)
第百五十六条 株式会社が株主との合意により当該株式会社の株式を有償で取得するには、あらかじめ、株主総会の決議によって、次に掲げる事項を定めなければならない。ただし、第三号の期間は、一年を超えることができない。
(取得価格等の決定)
第百五十七条 株式会社は、前条第一項の規定による決定に従い株式を取得しようとするときは、その都度、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 取得する株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び数)
二 株式一株を取得するのと引換えに交付する金銭等の内容及び数若しくは額又はこれらの算定方法
三 株式を取得するのと引換えに交付する金銭等の総額
四 株式の譲渡しの申込みの期日
(株主に対する通知等)
第百五十八条 株式会社は、株主(種類株式発行会社にあっては、取得する株式の種類の種類株主)に対し、前条第一項各号に掲げる事項を通知しなければならない。
(特定の株主からの取得)
第百六十条 株式会社は、第百五十六条第一項各号に掲げる事項の決定に併せて、同項の株主総会の決議によって、第百五十八条第一項の規定による通知を特定の株主に対して行う旨を定めることができる。
2 株式会社は、前項の規定による決定をしようとするときは、法務省令で定める時までに、株主(種類株式発行会社にあっては、取得する株式の種類の種類株主)に対し、次項の規定による請求をすることができる旨を通知しなければならない。
3 前項の株主は、第一項の特定の株主に自己をも加えたものを同項の株主総会の議案とすることを、法務省令で定める時までに、請求することができる。
(特定の株主からの取得に関する定款の定め)
第百六十四条 株式会社は、株式(種類株式発行会社にあっては、ある種類の株式。次項において同じ。)の取得について第百六十条第一項の規定による決定をするときは同条第二項及び第三項の規定を適用しない旨を定款で定めることができる。
株主割当に関する部分も、基本的な考え方は自己株式の取得と同様です。株主割当とは、会社が新たに株式や新株予約権を発行する際に、既存の株主に対してその割当を行う方法のことをいいます。いわば「今の株主に優先的に機会を与える仕組み」です。
ここでも定款で別段の定めを置くことで、よりスピーディーに資本政策を実行できるようになります。
会社法185条、186条、202条、241条
(株式無償割当て)
第百八十五条 株式会社は、株主(種類株式発行会社にあっては、ある種類の種類株主)に対して新たに払込みをさせないで当該株式会社の株式の割当て(以下この款において「株式無償割当て」という。)をすることができる。
(株式無償割当てに関する事項の決定)
第百八十六条 株式会社は、株式無償割当てをしようとするときは、その都度、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 株主に割り当てる株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)又はその数の算定方法
二 当該株式無償割当てがその効力を生ずる日
三 株式会社が種類株式発行会社である場合には、当該株式無償割当てを受ける株主の有する株式の種類
2 (略)
3 第一項各号に掲げる事項の決定は、株主総会(取締役会設置会社にあっては、取締役会)の決議によらなければならない。ただし、定款に別段の定めがある場合は、この限りでない。
(株主に株式の割当てを受ける権利を与える場合)
第二百二条 株式会社は、第百九十九条第一項の募集において、株主に株式の割当てを受ける権利を与えることができる。この場合においては、募集事項のほか、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 株主に対し、次条第二項の申込みをすることにより当該株式会社の募集株式(種類株式発行会社にあっては、当該株主の有する種類の株式と同一の種類のもの)の割当てを受ける権利を与える旨
二 前号の募集株式の引受けの申込みの期日
2 (略)
3 第一項各号に掲げる事項を定める場合には、募集事項及び同項各号に掲げる事項は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める方法によって定めなければならない。
一 当該募集事項及び第一項各号に掲げる事項を取締役の決定によって定めることができる旨の定款の定めがある場合(株式会社が取締役会設置会社である場合を除く。) 取締役の決定
二 当該募集事項及び第一項各号に掲げる事項を取締役会の決議によって定めることができる旨の定款の定めがある場合(次号に掲げる場合を除く。) 取締役会の決議
三 株式会社が公開会社である場合 取締役会の決議
四 前三号に掲げる場合以外の場合 株主総会の決議
第二百四十一条 株式会社は、第二百三十八条第一項の募集において、株主に新株予約権の割当てを受ける権利を与えることができる。この場合においては、募集事項のほか、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 株主に対し、次条第二項の申込みをすることにより当該株式会社の募集新株予約権(種類株式発行会社にあっては、その目的である株式の種類が当該株主の有する種類の株式と同一の種類のもの)の割当てを受ける権利を与える旨
二 前号の募集新株予約権の引受けの申込みの期日
2 (略)
3 第一項各号に掲げる事項を定める場合には、募集事項及び同項各号に掲げる事項は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める方法によって定めなければならない。
一 当該募集事項及び第一項各号に掲げる事項を取締役の決定によって定めることができる旨の定款の定めがある場合(株式会社が取締役会設置会社である場合を除く。) 取締役の決定
二 当該募集事項及び第一項各号に掲げる事項を取締役会の決議によって定めることができる旨の定款の定めがある場合(次号に掲げる場合を除く。) 取締役会の決議
三 株式会社が公開会社である場合 取締役会の決議
四 前三号に掲げる場合以外の場合 株主総会の決議
株券発行
株券発行の有無も重要なポイントです。現在は株券不発行がデフォルトであり、発行しないことで管理コストや事務負担を抑えることができます。あえて株券を発行するメリットは限定的であるため、実務的には不発行とする設計が望ましいでしょう。
会社法214条
(株券を発行する旨の定款の定め)
第二百十四条 株式会社は、その株式(種類株式発行会社にあっては、全部の種類の株式)に係る株券を発行する旨を定款で定めることができる。
株主名簿
株主名簿に関する規定は、基本的には会社法どおりの記載で問題ありませんが、実務上は非常に重要な意味を持ちます。というのも、質権の設定や信託財産である旨の表示などは、株主名簿への記載・記録が第三者対抗要件とされています。よって、これらの登録手続きやその運用ルールを定款で明確にしておくことは、単なる形式ではなく、権利関係の混乱やトラブルを防ぐための実務的な備えといえます。
あわせて、見落としがちなのが手数料の規定です。名義書換請求などに対して手数料を請求できる旨を定めておくことで、将来的な事務コストの回収が可能になります。
会社法133条、147条、148条、154条の2
(株主の請求による株主名簿記載事項の記載又は記録)
第百三十三条 株式を当該株式を発行した株式会社以外の者から取得した者(当該株式会社を除く。以下この節において「株式取得者」という。)は、当該株式会社に対し、当該株式に係る株主名簿記載事項を株主名簿に記載し、又は記録することを請求することができる。
2 前項の規定による請求は、利害関係人の利益を害するおそれがないものとして法務省令で定める場合を除き、その取得した株式の株主として株主名簿に記載され、若しくは記録された者又はその相続人その他の一般承継人と共同してしなければならない。
(株式の質入れの対抗要件)
第百四十七条 株式の質入れは、その質権者の氏名又は名称及び住所を株主名簿に記載し、又は記録しなければ、株式会社その他の第三者に対抗することができない。
(株主名簿の記載等)
第百四十八条 株式に質権を設定した者は、株式会社に対し、次に掲げる事項を株主名簿に記載し、又は記録することを請求することができる。
一 質権者の氏名又は名称及び住所
二 質権の目的である株式
(信託財産に属する株式についての対抗要件等)
第百五十四条の二 株式については、当該株式が信託財産に属する旨を株主名簿に記載し、又は記録しなければ、当該株式が信託財産に属することを株式会社その他の第三者に対抗することができない。
2 第百二十一条第一号の株主は、その有する株式が信託財産に属するときは、株式会社に対し、その旨を株主名簿に記載し、又は記録することを請求することができる。
株主の住所等の届出
株主の住所等の届出に関する規定も実務上欠かせません。会社から株主への通知は、届け出られた住所宛に発送すれば足りると解されているため、正確な住所情報を把握しておくことが前提となります。この規定を整備しておくことで、通知の有効性を確保できます。
会社法126条
(株主に対する通知等)
第百二十六条 株式会社が株主に対してする通知又は催告は、株主名簿に記載し、又は記録した当該株主の住所(当該株主が別に通知又は催告を受ける場所又は連絡先を当該株式会社に通知した場合にあっては、その場所又は連絡先)にあてて発すれば足りる。
2 前項の通知又は催告は、その通知又は催告が通常到達すべきであった時に、到達したものとみなす。
基準日
理論上、株主は日々変動するため、議決権行使や配当の対象となる株主を確定する基準日を設ける必要があります。これは会社法に基づく基本的な規定ですが、実務上の混乱を防ぐためにも明確に定めておくことが重要です。
会社法124条
(基準日)
第百二十四条 株式会社は、一定の日(以下この章において「基準日」という。)を定めて、基準日において株主名簿に記載され、又は記録されている株主(以下この条において「基準日株主」という。)をその権利を行使することができる者と定めることができる。
定款は“作って終わり”ではない
ここまで見てきたとおり、株式に関する定款規定は、一見すると細かく地味な内容ですが、実務における手続きの負担や意思決定のスピードに確実に影響します。しかも多くの場合、「入れておいて損はない」どころか、「入れていないことで後から面倒になる」性質のものばかりです。
もし、「どこをどう見直せばいいかわからない」「自社に最適な形にしたい」と感じた場合は、行政書士などの専門家に相談することで、将来の手間やリスクを未然に防ぐことができます。定款を“使えるツール”として活かす一歩を、ぜひここから踏み出してみてください。
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