農業法人化で年金はどう変わる?農業者年金とiDeCoの話

農業経営の法人成りをすると、年金はどうなるのか!?

法人化を検討するには、法人設立の手続きや税金だけでなく、将来の資産形成についても考える必要があります。特に気になるのが、「農業者年金は法人化後どうなるのか」「国民年金と厚生年金がよくわからない」といった、老後に向けたお金の問題です。

農業法人化によって、加入する社会保険や年金制度、利用できる制度にも影響する可能性があります。そのため、法人化そのものだけを考えるのではなく、「将来、自分や家族の生活をどのように支えていくのか」という視点を持つことが大切です。

この記事では、農業法人化と「お金」の関係に注目し、農業者年金やiDeCoの基本的な考え方、法人化のタイミングで確認しておきたいポイントについて、わかりやすく解説します。これから農業法人化を検討している方は、将来のお金について考えるきっかけとして、ぜひ参考にしてください。

農業法人成りで変わる「公的年金」の基本

農業法人成りを考えるうえで、まず整理しておきたいのが「公的年金」の仕組みです。

個人で農業を営んでいる場合と、農業法人を設立して会社として事業を行う場合では、加入する年金制度の考え方が変わります。まずは土台となる国民年金と厚生年金について理解しておくことが大切です。

個人経営の農業者は原則として国民年金の第1号被保険者

個人事業主として農業を営んでいる場合、原則として国民年金の「第1号被保険者」に該当します。

公的年金には、全国民共通の基礎となる「国民年金」があります。個人経営の農業者の場合は、この国民年金が公的年金の基本となります。

つまり、将来の年金について考える際には、国民年金を土台として、その上に農業者年金やiDeCoなどを活用しながら、老後に向けた資産形成を考えていくことになります。

農業法人を設立すると厚生年金への加入が必要になる

一方、農業を法人化し、会社を設立すると状況が変わります。

法人の役員として報酬を受けたり、法人で働く従業員として給与を受けたりする場合、社会保険の適用関係が生じ、厚生年金に加入することになります。

厚生年金に加入すると、公的年金は国民年金だけではなくなります。国民年金が年金制度の基礎となる「1階部分」だとすると、その上に厚生年金という「2階部分」が加わるイメージです。

法人化によって、個人経営のときとは異なり、この国民年金と厚生年金を組み合わせた公的年金制度の中で、将来の年金を考えることになります。

農業法人化すると農業者年金はどうなる?

農業法人成りによって公的年金の仕組みが変わることを理解したうえで、次に確認したいのが「農業者年金」です。個人で農業を営んでいる方の中には、国民年金に加えて農業者年金に加入している方もいるでしょう。

この農業者年金についても、法人化によって働き方や公的年金の加入状況が変わるため、その位置づけを理解しておくことが重要です。

農業者年金は国民年金に上乗せする「2階部分」

個人で農業を営む場合、公的年金の土台となるのは国民年金です。

これを年金の「1階部分」と考えると、農業者年金は、その国民年金に上乗せして将来の年金を準備するための制度と考えることができます。

つまり、個人経営の農業者が農業者年金に加入している場合、年金のイメージとしては次のようになります。

国民年金(1階) + 農業者年金(2階)

国民年金だけでは老後の生活資金に不安がある場合に、その上乗せとして農業者年金に加入し、将来受け取る年金を増やしていくという考え方です。

農業法人化すると「上乗せ部分」の考え方が変わる

ところが、農業を法人化し、会社の役員や従業員として働くようになると、公的年金の仕組みが変わります。

これまで個人経営では国民年金を1階部分として、その上に農業者年金という上乗せ部分を持っていました。一方、法人化後は、2階部分が厚生年金になります。

国民年金(1階) + 厚生年金(2階)

つまり、農業者年金の代わりに、厚生年金に加入しなければならない、というイメージです。

さらに老後の資産形成をしたいならiDeCoを活用

法人化後もさらに自分で資産形成をしていきたいと考える方もいるでしょう。そのような場合に、選択肢の一つとなるのがiDeCo(個人型確定拠出年金)です。

農業者年金はiDeCoと併用できない

まず、個人経営の農業者が資産形成について考える際に押さえておきたいのは、農業者年金とiDeCoは併用できないという点です。個人で農業を営み、国民年金の第1号被保険者として農業者年金に加入している場合、さらにiDeCoへ加入することはできません。

そのため、「老後の資産形成は、農業者年金かiDeCoを選ぶ」という考え方が基本です。

実際は、農業者年金の掛金が所得控除の対象となる点を活用するため、農業者年金に加入している方が多いでしょう。所得税や住民税の負担を考える上では、農業者年金は老後資金の準備と所得控除を両立できる制度として重要な選択肢です。

この場合、「さらに老後の資産形成をしたいからiDeCoも追加しよう」ということはできません。

農業者年金に加入している場合、国民年金と農業者年金を軸として老後資金を考えることになります。

法人化して厚生年金の被保険者になるとiDeCoが選択肢になる

一方、農業を法人化し、法人の役員や従業員として厚生年金の被保険者になると、選択肢が変わります。厚生年金の被保険者は、一定の条件や掛金の上限の範囲内でiDeCoに加入することができます。

つまり、農業法人化によって公的年金の2階部分が厚生年金になることで、さらに自分自身で老後資金を準備するための選択肢として、iDeCoを検討できるようになります。

現行の制度では、企業型確定拠出年金や確定給付企業年金などの企業年金がない場合、iDeCoの掛金は月額2万3,000円まで拠出することができます。しかし、2026年12月から、6万2,000円まで限度額が引き上げられる予定です。

個人経営と法人化後で変わる老後の資産形成

個人経営と農業法人化後では、老後に向けた年金・資産形成の考え方が変わります。

個人経営で農業を営んでいる場合は、

国民年金 + 農業者年金

という形で、国民年金を土台に、その上乗せとして農業者年金を活用して老後資金を準備していくパターンが多いと思います。農業者年金に加入している場合はiDeCoを併用できないため、さらにiDeCoを追加して資産形成をすることはできません。

一方、農業を法人化し、厚生年金の被保険者となった場合は、

国民年金 + 厚生年金 + iDeCo

という形も考えることができます。

法人化によって、公的年金の2階部分が厚生年金となり、そのうえで、さらに自分自身の老後資金を準備する選択肢としてiDeCoを活用することができます。

農業法人成りを考える際には、法人設立や税金だけでなく、法人化によって将来の年金や資産形成の選択肢がどのように変わるのかについても、一緒に確認しておくことが大切です。

まとめ|農業法人化をきっかけに「お金」の仕組みを見直そう

農業法人成りを考える際には、法人設立の手続きや税金だけでなく、将来の年金や老後の資産形成についても考えておくことが大切です。

個人経営で農業を営んでいる場合は、原則として国民年金の第1号被保険者となり、その上乗せとして農業者年金を活用することができます。

一方、農業を法人化し、法人の役員や従業員として厚生年金の被保険者になると、公的年金の仕組みが変わります。iDeCoを活用することで、さらに自分自身の老後資金を準備する選択肢を検討することができます。

役員報酬や社会保険料、法人の経営状況、そして将来必要となる生活資金などを総合的に考えながら、自分に合った資産形成を考えることが重要です。

農業法人成りは、単に「個人事業を会社にする」という手続きではありません。経営の形が変わることで、税金や社会保険だけでなく、将来受け取る年金や老後資金の準備方法にも変化が生まれます。

これから農業法人化を検討する方は、「法人化した後の経営をどうするか」だけではなく、「法人化した後、自分や家族の将来のお金をどう準備するか」という点についても、一緒に考えてみてはいかがでしょうか。

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