行政手続き約7万5,000件をAIで分析?行政DXが変える「手続きの未来」②

デジタル庁が、興味深い取り組みをリリースしました。

今回公表されたのは、国の行政手続等に関する約75,000件の調査データを、AIとの対話を通じて自然な言葉で分析できるようにする技術検証です。

具体的に何ができるようになるのか。私たちにとって、どこが便利になっていくのか。そして、行政手続きの未来はどうなるのかを、行政書士の視点から考えていきます。

⾏政⼿続等調査データ(約75,000件)をMCPで⾃然⾔語分析可能に|デジタル庁

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デジタル庁が、興味深い取り組みをリリースしました。 今回公表されたのは、国の行政手続等に関する約75,000件の調査データを、AIとの対話を通じて自然な言葉で分析できる…

【第2回】行政手続きのDXは「オンライン化」だけでは終われない

1. 必要な手続きが分かっても、手続きそのものが難しければ意味がない

自分の状況をもとに質問することで、必要な手続きにアクセスしやすくなる。さらに、関係する手続きを横断的に確認できるようになれば、これまでよりも調べ漏れや検索漏れを減らせる可能性があります。

これは、行政手続きにとって大きな前進だと思います。ただ、必要な手続きが分かったとして、その手続き自体を行えるかは、別の問題です。

必要な手続きの情報にアクセスできるようになった。どこで手続きをするのかも分かった。しかし、その先で、

  • 何を入力すればいいのか分からない
  • どの書類を準備すればいいのか分からない
  • 何を添付すればいいのか分からない
  • どの順番で手続きを進めればいいのか分からない

という状態になったらどうでしょうか。

必要な手続きを見つけることができても、実際の手続きを進める段階で止まってしまえば、利用する人の負担はそれほど減りません。

行政手続きが本当に便利になるためには、その入口だけでは足りません。必要な手続きを見つけた後、その人が迷わず手続きを進め、最後まで完了できる。そこまで含めて初めて、利用者にとって「便利になった」と感じられるのではないでしょうか。

2. 紙の煩雑さがデジタルの煩雑さに変わっただけでは意味がない

よくあるパターンは、これまで紙で行っていた手続きの仕組みや流れを、そのままデジタルに置き換えてしまうことです。

紙の書類を使っていた手続きが、パソコンやスマートフォンからできるようになる。窓口に行かなければならなかった手続きが、自宅からいつでもオンラインでできるようになる。これは間違いなく便利になる部分があります。

しかし、紙の時代に感じていた手続きの煩雑さまで、そのまま残ってしまったらどうでしょうか。

紙の書類で「どこに何を書けばいいのか分からない」と悩んでいたものが、デジタルになって「何を入力すればいいのか分からない」に変わっただけ。複数の書類を準備しなければならなかったものが、複数の画面を行き来しながら入力しなければならなくなっただけ。必要な情報や添付書類が分かりにくかったものが、オンラインになっても結局、分かりにくくて調べる手間が増えるだけ。

これでは、手続きそのものが簡単になったとは言えません。紙の煩雑さが、デジタルの煩雑さに変わっただけです。

ここで考えたいのが、単なるデジタル化とDXの違いです。必要なのは、単にデジタルに変えるのではなく、これまでの手続きの流れや仕組みそのものを再設計することです。

そもそも、なぜこの情報を何度も入力しなければならないのか。なぜ、この順番で手続きを進めなければならないのか。

デジタル化をきっかけに、こうした手続きそのものを改めて見直していく。そうした仕組みの再設計まで進めていくことが、本当の意味でのDXなのではないかと思います。

そうした視点で、手続き全体を考え直していくことが、これからの行政DXでは重要になってくるはずです。

3. オンライン化しても、手続きが簡単になるとは限らない

実際にオンライン化された行政手続きの仕組みを見てみると、「オンラインでできること」と「利用者にとって簡単であること」は、必ずしも同じではないと感じる場面があります。

例えば、e-Taxです。

e-Taxを利用すれば、税務署の窓口へ行かなくても手続きを進めることができます。時間や場所に縛られずに申請できるという点では、オンライン化による大きなメリットがあります。

一方で、実際に手続きを始めようとすると、まず自分が利用する環境や方法を確認する必要があります。

e-Taxには、Web上で利用できる仕組みがある一方で、手続きによってはe-Taxソフトを利用する必要があります。e-Taxソフトを利用する場合には、ソフトのダウンロードや、必要なプログラムのインストールなど、申請そのものに入る前の準備が必要になる場合もあります。

つまり、「この手続きをしたい」という目的があったとしても、すぐに必要事項を入力して申請を始められるとは限りません。

まず、どの仕組みを利用するのかを確認する。そのために必要な環境を整える。必要なソフトやプログラムを準備する。その上で、ようやく手続きに進む。利用者からすると、手続きそのものとは別に、「手続きをするための準備」という工程が発生することになります。

また、Web版でできる手続きと、e-Taxソフトを利用する必要がある手続きが分かれている場合、そもそも自分がどちらを利用すればいいのかを判断しなければなりません。

これは制度やシステムを理解している側にとっては、それぞれ合理的な理由があるのかもしれません。しかし、利用者にとって重要なのは、システムがどのように作られているかよりも、「自分が何をすれば手続きを完了できるのか」ということです。

行政手続きのデジタル化を考える上で、「オンラインで申請できる仕組みがある」ということと、「利用者が迷わず申請できる」ということの間には、大きな違いがあります。

紙で必要だった準備や確認が、今度はソフトのダウンロードや利用環境の設定、複数のシステムの使い分けという形に変わることもあります。これでは、手続きそのものの負担を減らしたというより、負担の形が変わっただけです。

だからこそ、DXを考える際には、紙をデジタルに置き換えるだけでは不十分です。

マイナポータル、e-Gov、OSS、eMAFF、DIPS2.0、Jグランツ・・・。行政手続きのオンライン化は着実に進んでいます。

便利になった部分はたくさんあります。それに加えて、仕組みまで含めて再設計していくことが、今後、ますます重要になってくると思います。

やってみた!行政手続き約7万5,000件をAIで分析?