行政手続き約7万5,000件をAIで分析?行政DXが変える「手続きの未来」①

デジタル庁が、興味深い取り組みをリリースしました。

今回公表されたのは、国の行政手続等に関する約75,000件の調査データを、AIとの対話を通じて自然な言葉で分析できるようにする技術検証です。

具体的に何ができるようになるのか。私たちにとって、どこが便利になっていくのか。そして、行政手続きの未来はどうなるのかを、行政書士の視点から考えていきます。

⾏政⼿続等調査データ(約75,000件)をMCPで⾃然⾔語分析可能に|デジタル庁

【第1回】AIを使うと、行政手続きの「入口」はどう変わるのか?

1. デジタル庁が発表した新しい取り組み

デジタル庁が、行政手続きの未来を考えるうえで興味深い取り組みを発表しました。

今回発表したのは、国の行政手続等に関する約75,000件の調査データを、AIとの対話を通じて自然な言葉で分析できるようにする技術検証です。

例えば、

  • 結婚や離婚に関係する手続きを知りたい!
  • 会社を設立するときに、どんな行政手続きが必要なのか?

といった形で質問すると、関係する行政手続きを横断的に探したり、データを分析したりできる仕組みです。

今回の取り組みでは、MCPという仕組みを活用して、AIと行政手続きに関するデータをつなげています。ただし、AIに約75,000件のデータをそのまま読み込ませて、「あとはAIに任せる」という仕組みではありません。

AIは、どのような条件で情報を探すのか、何を分析するのかといった指示の部分を担います。一方で、実際の計算処理は、サーバー側で行います。

データの意味や注意点、数値をどのように扱うべきかといった情報もあらかじめ定義することで、AIがデータを誤って解釈したり、不適切な集計をしたりすることを防ぐ工夫もされています。

今回の取り組みは、これまでの行政手続きにおける、「必要な手続きを探す」という最初の段階を、大きく変える可能性を持っています。

行政手続きのデジタル化というと、

  • 紙の申請書がなくなる
  • オンラインで申請できるようになる

といったことをイメージする方が多いかもしれません。もちろん、それもデジタル化の一つです。

しかし、その前には、

  • そもそも自分には、どんな手続きが必要なのか
  • 何を調べればいいのか

という、もう一つの壁があります。

では、具体的に今回の仕組みでは何ができるようになるのか。そして、私たちが行政手続きを利用するうえで、何が変わっていくのか。デジタル庁が発表した内容をできるだけ分かりやすく紐解きながら、考えていきます。

2. 今回の仕組みは、普段のチャット型AIと何が違うのか?

「でも、それってChatGPTやGeminiに質問するのと何が違うの?」と思った方もいるかもしれません。

分からないことを調べる方法は、検索エンジンでキーワードを入力するだけではありません。ChatGPTやGeminiなどのチャット型AIに質問して、必要な情報を調べる方法も、既にスタンダードになりました。

行政手続きについても、

  • 結婚したら、どんな手続きが必要?
  • 会社を設立するとき、何をすればいい?

と質問すれば、AIはある程度の答えを返してくれます。

ただ、今回の仕組みには、そこからさらに一歩進んだ部分があります。ポイントになるのが、先ほども触れたMCPという仕組みです。

一般的なチャット型AIは、AIが学習済みの知識や、参照できるネット上の情報をもとに回答を作ります。

一方で、今回の取り組みでは、行政手続きに関する公的なデータやリソースについて、その集計や利用方法なども定義した上で、回答を導いていきます。

つまり、適切な情報を、適切な形式で提供できるようにすることが、今回の取り組みの大きなポイントです。

行政手続きのように正確性が求められる分野でAIを活用していくためには、AIがどれだけ賢いかだけではなく、どんな情報をどのように参照させて、答えを出すのか。これも非常に重要になります。

今回の取り組みは、すでに身近になりつつある「AIに質問して調べる」という方法を、行政手続きという分野でも、より正確で信頼できる形に進化させようとしている。そんな取り組みです。

3. AIによって、行政手続きの「入口」はどう変わるのか?

公共データのMCP公開によって、今後期待できるメリットは、大きく2つあると思います。

①「検索する」から「質問する」へ

これまで行政手続きを調べるときは、まず自分で検索する必要がありました。しかし、検索するためには、「何を調べればいいのか」を、ある程度自分で分かっていなければなりません。

一方で、AIに質問するのであれば、自分の状況を伝えるところから始められます。

これによって、必要な手続きにアクセスするまでのハードルは、これまでよりも大きく下がる可能性があります。

② 必要な手続きの「調べ漏れ」を減らせる

もう一つのメリットが、調べ漏れを減らせる可能性があることです。行政手続きは、一つの省庁や行政機関だけで完結するとは限りません。

自分で調べる場合、「この手続きは見つけた」と思っていても、別に必要な手続きがあることに気付いていない可能性があります。

複数の府省庁にまたがる情報を横断的に扱える仕組みが整えば、一つの手続きを探すだけではなく、自分の状況に関係する手続きをまとめて確認することができるようになります。

今回の取り組みによって変わるのは、単に行政手続きの調べ方だけではありません。

  1. 何を調べればいいのか分からないところから始められる。
  2. 自分だけでは気付きにくい手続きも含めて確認できる。

この2つが、行政手続きを利用する側にとっての大きなメリットになるのではないでしょうか。

4. 今回の取り組みで便利になるのは、行政手続きの「最初の一歩」

今回のデジタル庁の取り組みは、AIがすべての行政手続きを代わりに行ってくれるようになる、というものではありません。大きく変わる可能性があるのは、行政手続きの「最初の一歩」です。

これまでは、

「何か手続きが必要になった」

「自分で何を調べるか考える」

「検索する」

「必要な手続きを探す」

という流れが基本でした。しかし、AIを活用することで、

「自分はいま、こんな状況です」

「必要な手続きを質問する」

「関係する手続きにアクセスする」

という流れに変わっていく可能性があります。

つまり、利用者にとって大きいのは、必要な手続きにたどり着くまでの負担が減るということです。

しかし、入口だけが便利になっても、行政手続き全体が便利になるとは言えません。次に重要になるのは、「必要な手続きを見つけた後、その手続きを誰でも分かりやすく進められるのか」という部分になると思います。

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