【保存版⑥】行政書士が解説!株式会社の定款「取締役・代表取締役」の実務ポイント

株式会社の定款を作成する際、「とりあえず会社法どおりに書いておけば問題ない」と考えていませんか。特に取締役や代表取締役といった役員に関する規定は、ひな形をそのまま使ってしまうケースも少なくありません。

しかし実務上は、この“役員設計”こそが会社運営のしやすさを大きく左右します。取締役の人数をどう定めるか、選任や解任をどの程度スムーズに行えるようにするか、代表権を誰に持たせるか。これらの選択一つで、将来の意思決定スピードやトラブル対応の難易度が大きく変わってきます。

本記事では、株式譲渡制限会社(いわゆる非公開会社)のうち、小規模な会社を前提に、実務上よく採用される定款設計を中心に解説しています。公開会社や取締役会設置会社では取扱いが異なる場合がありますのでご留意ください。

本記事で解説する記載例

定款の記載例

第4章 取締役及び代表取締役

(取締役の員数)
第24条 当会社の取締役は、1名以上とする。

(取締役選任及び解任の方法)
第25条 当会社の取締役の選任及び解任は、株主総会において、議決権を行使することができる株主の議決権の3分の1以上を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数をもって行う。
2  取締役の選任決議については累積投票によらないものとする。

(取締役の任期)
第26条 取締役の任期は、選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結のときまでとする。
2  補欠により選任した取締役の任期は、退任した取締役の任期の満了するときまで、増員により選任した取締役の任期は、その選任時に在任する取締役の任期の満了するときまでとする。

(代表取締役及び社長)
第27条 当会社は、株主総会の決議によって代表取締役を選任する。
2  代表取締役は、社長とし、会社の業務を執行する。
3 代表取締役社長に事故があるときは、あらかじめ株主総会の定める順序に従い他の取締役が代表取締役社長の職務を代行する。

(取締役の報酬等)
第28条 取締役の報酬、賞与その他の職務執行の対価として当会社から受ける財産上の利益は、株主総会の決議によって定める。

会社法どおり“だけ”では不十分な理由

株式会社の定款は、会社法に基づいて作成されるため、「法律どおりに書いていれば足りる」と考えられがちです。確かに、最低限の要件を満たすという意味ではそれでも問題はありません。

しかし、会社法の多くの規定は“任意規定”とされており、定款で柔軟に設計できる余地が広く認められています。特に非公開会社においては、取締役の任期を最長10年まで延ばせることや、選任決議の定足数を緩和できることなど、実務上の負担を軽減する工夫が可能です。

一方で、こうした設計を意識せずに定款を作成してしまうと、例えば「役員変更のたびに株主総会の開催が必要になり手間がかかる」「解任手続が煩雑になりトラブル時に迅速な対応ができない」といった問題が生じることもあります。

つまり、定款は単なる“法律の写し”ではなく、将来の会社運営を見据えた“設計図”として捉える必要があります。とりわけ取締役や代表取締役に関する規定は、経営の意思決定やガバナンスに直結する重要な部分であり、実務を踏まえた慎重な設計が求められます。

①取締役の員数

取締役の員数についてですが、会社法上は「一人又は二人以上の取締役」とされており、この点は定款にもそのまま反映するのが基本です。特段の理由がなければこの形で問題ありません。

ここで検討ポイントになるのが、「上限を設けるかどうか」です。例えば「取締役は5名以内とする」といった形で上限を設けることも可能ですが、これには注意が必要です。というのも、将来的に役員を増やしたい場面が出てきた際、上限に引っかかってしまうと、その都度定款変更が必要になり、手続的な負担が増えてしまうためです。

ガバナンスを重視したい場合や、取締役の人数を一定範囲にコントロールしたい事情がある場合には、上限を設けることにも合理性があります。
一方で、今後の組織体制が流動的な会社においては、あえて上限を設けず「1名以上」とだけ規定しておくことで、柔軟な役員構成が可能になります。

会社法326条

(株主総会以外の機関の設置)
第三百二十六条 株式会社には、一人又は二人以上の取締役を置かなければならない。

②取締役選任及び解任の方法

まず、取締役の選任については、会社法上、株主総会の決議によって行うこととされています。ここでの決議は、いわゆる「普通決議の特則」であり、定足数については完全に自由に設定できるわけではありません。具体的には、出席株主の割合を「3分の1以上」とする必要があり、これを下回る形で定款に定めることはできません。

そのため実務では、「議決権を行使することができる株主の3分の1以上が出席し、その議決権の過半数をもって決する」といった形で、会社法に沿った記載をしておくのが一般的です。むしろ、定足数をこの最低ラインまで緩和しておくことで、株主が集まりにくい会社でも意思決定を進めやすくなるというメリットがあります。

会社法329条、339条、341条

(選任)
第三百二十九条 役員(取締役、会計参与及び監査役をいう。以下この節、第三百七十一条第四項及び第三百九十四条第三項において同じ。)及び会計監査人は、株主総会の決議によって選任する。

(解任)
第三百三十九条 役員及び会計監査人は、いつでも、株主総会の決議によって解任することができる。

(役員の選任及び解任の株主総会の決議)
第三百四十一条 第三百九条第一項の規定にかかわらず、役員を選任し、又は解任する株主総会の決議は、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(三分の一以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)をもって行わなければならない。

次に重要なのが、「累積投票を排除するかどうか」です。累積投票とは、複数の取締役を選任する際に、株主が保有する議決権を特定の候補者に集中させることができる制度です。少数株主の保護という観点では有効な制度ですが、実務上は注意が必要です。

というのも、累積投票によって選任された取締役を解任する場合、その解任は特別決議が必要となり、手続が一気に重くなってしまいます。トラブル対応や経営判断のスピードが求められる場面では、この点が大きな足かせになる可能性があります。

そのため、特段の理由がない限りは「取締役の選任については累積投票によらないものとする」と定款で明記しておく。そして、シンプルで柔軟な人事運用ができるようにしておくのが実務的には望ましいといえます。

会社法342条、309条

(累積投票による取締役の選任)
第三百四十二条 株主総会の目的である事項が二人以上の取締役(監査等委員会設置会社にあっては、監査等委員である取締役又はそれ以外の取締役。以下この条において同じ。)の選任である場合には、株主(取締役の選任について議決権を行使することができる株主に限る。以下この条において同じ。)は、定款に別段の定めがあるときを除き、株式会社に対し、第三項から第五項までに規定するところにより取締役を選任すべきことを請求することができる。
2 前項の規定による請求は、同項の株主総会の日の五日前までにしなければならない。
3 第三百八条第一項の規定にかかわらず、第一項の規定による請求があった場合には、取締役の選任の決議については、株主は、その有する株式一株(単元株式数を定款で定めている場合にあっては、一単元の株式)につき、当該株主総会において選任する取締役の数と同数の議決権を有する。この場合においては、株主は、一人のみに投票し、又は二人以上に投票して、その議決権を行使することができる。
4 前項の場合には、投票の最多数を得た者から順次取締役に選任されたものとする。
5 前二項に定めるもののほか、第一項の規定による請求があった場合における取締役の選任に関し必要な事項は、法務省令で定める。
6 前条の規定は、前三項に規定するところにより選任された取締役の解任の決議については、適用しない。

(株主総会の決議)
第三百九条 (略)
2 前項の規定にかかわらず、次に掲げる株主総会の決議は、当該株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(三分の一以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の三分の二(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければならない。この場合においては、当該決議の要件に加えて、一定の数以上の株主の賛成を要する旨その他の要件を定款で定めることを妨げない。
(略)
七 第三百三十九条第一項の株主総会(第三百四十二条第三項から第五項までの規定により選任された取締役(監査等委員である取締役を除く。)を解任する場合又は監査等委員である取締役若しくは監査役を解任する場合に限る。)

③取締役の任期

取締役の任期は原則として「2年」とされています。しかし、非公開会社であれば、この任期を最長「10年」まで伸長することが可能です。定款で定めることにより、任期の柔軟な設計が認められている点が大きな特徴です。

任期を短く設定すれば、その都度、株主総会の開催や登記手続が必要となり、手間とコストがかかります。一方で、定期的に役員の見直しができるというメリットがあります。例えば、外部取締役を置いている場合や、経営体制を柔軟に見直したい会社においては、あえて任期を短めに設定する方が適しているケースもあります。

任期を最長の10年に設定すれば、こうした手続負担を大幅に軽減することができます。特に、同族会社や役員構成が安定している会社においては、任期を長めに設定しておくことで、実務上の効率が高まります。

したがって、自社の株主構成や経営体制、将来の見通しを踏まえて設計することが重要です。

会社法332条

(取締役の任期)
第三百三十二条 取締役の任期は、選任後二年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。ただし、定款又は株主総会の決議によって、その任期を短縮することを妨げない。
2 前項の規定は、公開会社でない株式会社(監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社を除く。)において、定款によって、同項の任期を選任後十年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで伸長することを妨げない。

④代表取締役及び社長

代表取締役および社長に関する定めは、対外的な権限関係に直結するため、定款上もしっかり整理しておく必要があります。そのため、代表権を明確に代表取締役に集中させる規定を置くのが一般的です。

また、「代表取締役社長」という役職についてもよく定款に記載されますが、会社法上は“社長”という名称自体に特別な意味はありません。あくまで会社内部の役職名にすぎないため、法的に重要なのは「代表取締役」である点に注意が必要です。

したがって、「社長」という呼称を用いる場合でも、定款上は「代表取締役を社長とすることができる」といった整理にしておくと、実務と法的整理のバランスが取りやすくなります。

会社法349条

(株式会社の代表)
第三百四十九条 取締役は、株式会社を代表する。ただし、他に代表取締役その他株式会社を代表する者を定めた場合は、この限りでない。
2 前項本文の取締役が二人以上ある場合には、取締役は、各自、株式会社を代表する。
3 株式会社(取締役会設置会社を除く。)は、定款、定款の定めに基づく取締役の互選又は株主総会の決議によって、取締役の中から代表取締役を定めることができる。
4 代表取締役は、株式会社の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。
5 前項の権限に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。

⑤取締役の報酬等

最後に、取締役の報酬等に関する定めです。

もっとも、実務では定款で具体的な金額や算定方法まで細かく定めることはほとんどありません。なぜなら、一度定款に記載してしまうと、報酬を変更するたびに定款変更が必要となり、手続的な負担が大きくなってしまうためです。

そのため一般的には、「取締役の報酬等は株主総会の決議によって定める」といった形で、定款には枠組みのみを規定し、具体的な金額や配分は株主総会で柔軟に決定できるようにしておきます。

会社法361条

(取締役の報酬等)
第三百六十一条 取締役の報酬、賞与その他の職務執行の対価として株式会社から受ける財産上の利益(以下この章において「報酬等」という。)についての次に掲げる事項は、定款に当該事項を定めていないときは、株主総会の決議によって定める。
一 報酬等のうち額が確定しているものについては、その額
二 報酬等のうち額が確定していないものについては、その具体的な算定方法
三 報酬等のうち当該株式会社の募集株式(第百九十九条第一項に規定する募集株式をいう。以下この項及び第四百九条第三項において同じ。)については、当該募集株式の数(種類株式発行会社にあっては、募集株式の種類及び種類ごとの数)の上限その他法務省令で定める事項
四 報酬等のうち当該株式会社の募集新株予約権(第二百三十八条第一項に規定する募集新株予約権をいう。以下この項及び第四百九条第三項において同じ。)については、当該募集新株予約権の数の上限その他法務省令で定める事項
五 報酬等のうち次のイ又はロに掲げるものと引換えにする払込みに充てるための金銭については、当該イ又はロに定める事項
イ 当該株式会社の募集株式 取締役が引き受ける当該募集株式の数(種類株式発行会社にあっては、募集株式の種類及び種類ごとの数)の上限その他法務省令で定める事項
ロ 当該株式会社の募集新株予約権 取締役が引き受ける当該募集新株予約権の数の上限その他法務省令で定める事項
六 報酬等のうち金銭でないもの(当該株式会社の募集株式及び募集新株予約権を除く。)については、その具体的な内容

その定款、今の会社にフィットしていますか?

ここまで見てきたとおり、取締役の員数、選任・解任方法、任期など、すべて会社法にルールがある一方で、定款によって柔軟に設計できる領域でもあります。そのため重要なのは、「法律どおりに書くこと」ではなく、「自社の実態に合った形で設計すること」です。少しの工夫で会社運営のしやすさは大きく変わります。

一方で、こうした設計を十分に検討せず、ひな形のまま定款を作成してしまうと、後々「動かしにくい会社」になってしまう可能性もあります。定款は一度作って終わりではなく、会社の成長や状況の変化に応じて見直していくべき“経営の基盤”です。

もし、「今の定款が自社に合っているのか分からない」「これから設立するにあたり最適な設計にしたい」といったお悩みがあれば、行政書士などの専門家に相談することで、将来を見据えた無理のない定款設計が可能になります。経営をスムーズに進めるためにも、この機会にぜひ一度、自社の定款を見直してみてください。

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