職務上請求って何?士業は相続手続きをどう進めるのか?

相続手続きでは、亡くなった方の戸籍を集めたり、そこから相続人を確認したりと、やらなければならないことがいくつもあります。

特に戸籍の収集は、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍をたどる必要があったり、本籍地が変わっていたり、相続人の数が多かったりすると、思っていた以上に手間がかかることがあります。

一方で、行政書士などの士業に相続手続きを依頼すると、依頼者に代わって戸籍を集め、相続関係を確認し、必要な書類を整理しながら手続きを進めていきます。

では、行政書士は、依頼者本人ではないのに、どうやって戸籍を取得して相続人を調査しているのでしょうか。

この記事では、なぜ行政書士などの士業が戸籍を請求できるのかを説明するとともに、行政書士が相続の依頼を受けてから、相続人の調査や戸籍の収集などをどのような流れで進めていくのかを、解説します。

職務上請求って何?士業が戸籍を取得する仕組み

相続手続きを行政書士に依頼すると、亡くなった方の戸籍を集め、そこから相続人を確認してもらうことができます。その仕組みを理解するうえで知っておきたいのが、「職務上請求」です。

職務上請求とはどんな制度?

職務上請求とは、行政書士などの一定の資格者が、受任した業務を遂行するために必要な戸籍謄本や住民票の写しなどを、職務上必要なものとして請求する制度です。

相続では、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍を確認し、配偶者や子どもなど、誰が相続人になるのかを確定していく必要があります。結婚や転籍、戸籍の改製などによって複数の戸籍をたどる必要がある場合もあり、相続人の調査には戸籍の収集が欠かせません。

そこで、相続手続きを受任した行政書士が、その業務を進めるために必要な戸籍等を職務上請求によって取得することがあります。

つまり職務上請求とは、「士業なら他人の戸籍を自由に取得できる」という制度ではなく、資格者が自らの職務を遂行するために必要な戸籍等を請求するための制度です。

なぜ士業は戸籍を請求できるの?

行政書士が職務上、戸籍謄本などを請求できるのは、行政書士だから特別に戸籍を自由に取得できる、ということではありません。

行政書士には、行政書士法に基づいて、官公署に提出する書類や、権利義務・事実証明に関する書類を作成するという業務があります。相続手続きでは、こうした書類を作成するために、まず亡くなった方の戸籍を確認して相続人を確定する必要があります。

そして、その業務に必要な戸籍謄本等については、戸籍法第10条の2に、弁護士・司法書士・行政書士などの資格者が、その受任している事件または事務を遂行するために必要な場合に請求できることが定められています。

また、住民票の写しなどについても、住民基本台帳法第12条の3に、同様に資格者がその職務上必要とする場合の請求について規定されています。

相続手続きでは、この法的な根拠に基づいて必要な戸籍を収集し、亡くなった方の身分関係を確認しながら、相続人を確定していきます。

士業ならどんな戸籍でも取得できるわけではない

しかし、職務上請求は、行政書士などの士業が好きなように戸籍を取得できる制度ではありません。

行政書士においてポイントになるのは、行政書士として受任した業務を遂行するために、その戸籍が必要なのかということです。行政書士の業務には、官公署に提出する書類や、権利義務・事実証明に関する書類を作成することなどがあります。

そのため、相続手続きで戸籍を収集する場合も、単に「相続人を調べたいから」というだけではなく、行政書士が受任した書類作成などの業務を進めるために必要であることが前提になります。

例えば、相続人を確定するために戸籍を収集し、その戸籍をもとに遺産分割協議書や相続関係説明図などの書類を作成するのであれば、戸籍の収集は行政書士の業務と直接つながっています。

一方で、行政書士として受任した業務とは関係なく、

  • 家系図を作りたい
  • 親族関係を確認したい
  • 特定の戸籍だけ取得したい

といった目的で職務上請求を利用することはできません。

つまり、行政書士が職務上請求によって戸籍を取得できるのは、行政書士として行う業務があり、その業務を遂行するために戸籍の取得が必要だからです。

相続手続きを行政書士に依頼した場合も、こうした業務上の必要性に基づいて戸籍を収集し、相続人を確認していくことになります。

行政書士は実際にどのように相続人を調査する?

相続人の調査では、まず亡くなった方の戸籍を集めていきます。

ただし、戸籍を出生から死亡まで集めれば、それで相続人の調査が終わるわけではありません。集めた戸籍を一つずつ読み、そこに記載されている身分関係を確認しながら、誰が相続人になるのかを整理していくことが、実際の調査では重要になります。

例えば、現在の戸籍から子どもの存在が確認できれば、その子が相続人になるのかを確認します。さらに過去の戸籍をたどることで、現在の戸籍には記載されていない子どもや、以前の婚姻関係における子どもなどが見つかることもあります。

また、子どもがすでに亡くなっている場合には、その子に子どもがいるかどうかを確認する必要があります。そうした場合には、さらにその子の戸籍をたどり、代襲相続が発生するかを確認していきます。

一つの戸籍から次に確認すべき人物や戸籍を読み取り、必要な戸籍を請求し、取得した戸籍をまた確認する。そして、そこからさらに必要な情報が出てくれば、もう一度戸籍をたどっていく。この作業を繰り返しながら、亡くなった方を中心とした身分関係を整理し、最終的に法定相続人を特定していきます。

そのため、相続人の調査は、戸籍を「集める作業」だけではありません。集めた戸籍を読み解き、相続関係を一つずつつなげていく作業が大きな部分を占めます。

行政書士が職務上請求を利用できることで、必要な戸籍を本人に代わって請求できるとしても、そこから先の調査まで自動的に進むわけではありません。取得した戸籍の内容を確認し、相続関係を整理し、必要な書類の作成へとつなげていきます。

まとめ|行政書士は戸籍を集め、相続人を一つずつ確認していく

相続手続きを行政書士に依頼すると、戸籍の収集から相続人の確認、必要な書類の作成まで、相続関係を整理しながら手続きを進めてもらうことができます。

その中で利用されることがあるのが「職務上請求」です。行政書士には、受任した業務を遂行するために必要な場合、戸籍法や住民基本台帳法に基づいて、戸籍謄本や住民票の写しなどを職務上請求できる法的な根拠があります。

ただし、職務上請求は、行政書士なら誰の戸籍でも自由に取得できるというものではありません。行政書士として受任した業務との関係で必要性があり、その業務を遂行するために利用することが前提となります。

取得した戸籍を一つずつ確認し、そこから次に必要となる戸籍や確認すべき人物をたどり、身分関係を整理していきます。そうして戸籍の情報をつなぎ合わせながら、誰が相続人になるのかを確認し、必要な書類の作成へと進めていきます。

相続手続きの中でも、戸籍の収集や相続人の調査は、地道で時間のかかる作業です。

行政書士などの専門家に依頼することで、こうした戸籍の収集だけでなく、集めた戸籍を読み解いて相続関係を整理し、その後の書類作成まで相談しながら進めることができます。

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